「終活」という言葉を耳にする方も多いかと思います。
とある週刊誌が若者の就職活動の略語である就活をもじって作った造語として広まったといわれています。
終活や生前整理という言葉が、テレビメディアでも紹介されるようになり、私たちのご依頼も遺品整理だけではなく「生前整理」が取り上げられることも多くなってきました。
終活の当事者やそのご家族にとってメリットの大きな終活について、取り組んでみたいとお考えの方も少なくないのではないでしょうか。
そもそも終活とは何だろう?
終活とは「人生の終わりのための活動」の略語で、これからに備える取り組みを指します。
Wikipediaには、以下のように紹介されています。
終活(しゅうかつ)とは「人生の終わりのための活動」の略。人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎えるための様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉である。
一般的になってきた終活ですが、ご家族が「終活」の意味やニュアンスを誤解するなど、思うように準備が出来ず、葬儀や遺品整理で困ってしまう方と出会ってまいりました。
「人生の総括」という意味合いを持つと同時に、今後の定年後あるいは施設への入所に際しての新生活を迎える準備と捉えることができるでしょう。
終活は誰がやるの?
終活の当事者は、実際にこれから自分の死後を考えるご本人です。
たとえば「お墓」のこと。
ご自分が入るお墓を決めかねているといったお悩みを伺うことがございます。
多様化を問われる時代を象徴してか、海への散骨、樹木のもとで眠りにつく樹木葬、果てはロケットに乗って宇宙へ向かう宇宙葬など葬儀だけでも多くの選択肢が存在しています。
また、都会ではマンションタイプの墓地やデジタル墓地などお墓も多種多様になってきました。
終活の相談に応じてくれるサービスも増加している。
中には専門家に相談するなどして、具体的な方法を検討される方もいらっしゃるようです。
企業や自治体(「わたしの終活登録」横須賀市)だけではなく一般社団法人の資格試験も行われており、「終活カウンセラー」「終活アドバイザー」などの資格が存在しますので、こうした資格を持っている方に相談するのも良いかもしれません。さらには、行政書士や司法書士が、葬儀や納骨を代行する、といったサービスを提供していたりします。
重要なのはカウンセラーとの会話やセミナー自体ではなく「他人に話すことによって、自分では気づかなかったことも、こうしたセミナーで話を聞くことにより認識を新たにできる」ことでしょう。
その意味で、終活の当事者だけではなく、家族の協力が必要不可欠なのです。
当事者の方にお話を伺うと、自分の意に沿わないモノとならないように相続や遺産分割協議をしてほしい、といった思い、つまり「子供に迷惑をかけたくない」という思いが強い方も多いのです。
ですから、できる限り、ご家族の方にはご両親の気持ちを汲み取って準備をポジティブに手伝ってあげてほしいと思います。
終活とは、具体的に何をするものなの?
終活で検討する材料は多岐に渡ります。
- 財産の相続
- 遺言の作成
- 保険
- 葬儀
- 介護
- 健康関連
すべての項目を事細かに検討していては、それこそ「終活疲れ」になってしまっては本末転倒です。
基本的には自分の意思表示ができるうちに、エンディングノートや遺言といったものを用意して、自分の意思を明文化するということになります。
加えて、物理的にお部屋の整理を行う(生前整理)と社会的な関係について(たとえば、自営業の方は後進の育成や友人関係、お世話になった方へのご挨拶など)を加える例もございます。
さらには、延命治療をしない、といった自分の介護や病気についての方針、葬儀について事細かに決定するといったことや、孤独死を防ぐために見守りについての取り決めを行われる方もいらっしゃるようです。
なぜ終活を行うの?
なぜ終活を行うのかは、ご本人の意思を周りに表明することで、想定されるリスクを洗い出しておく、といったことができるからです。
終活を決断される方は、とにかく「自分の死後のことが心配だったから」とおっしゃる方が多いように思います。
現実的な視点では、立てた家の今後、生活雑貨の処遇や、遺産分割などたくさんの決め事が存在します。
たとえば、せっかく貯めてきた財産は意思通りに残された家族へ分配したいとお考えの方もいらっしゃることでしょう。
上手に引き継ぐためには準備を欠かしてはならず、そのために終活が存在しているという側面があるのです。
終活はいつから行えば良いの?
あくまでも1つの目安としてですが、健康寿命がひとつのポイントになると考えて良いかと思います。
日本人の平均寿命は83.98歳(2016年・世界銀行による統計)で、性別では、女性が87.26歳、男性が81.09歳(2018年・厚生労働省)となりました。
これに対して、医療や介護に頼らず、自立した生活が保てる年齢を示す「健康寿命」は、男性71.19歳、女性74.21歳です。実に、9〜12年の差があるのです。健康寿命(平成22年)厚生労働科学研究費補助金『健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究』
ご自身でしっかりと判断しながら取り組むためには60歳前後を目安にゆっくりと焦らずに始められることをオススメしています。
具体的にどのように終活をはじめたら良いの?
では具体的に、どのように始めれば良いのでしょうか。
具体的な方法については、以下の記事をぜひご覧ください。
終活とは、あなたの”人生設計”でもあります。
ここまでご紹介してきたように、終活はご自身で自分自身の今後を決めるための人生設計のひとつと捉えることができます。
しかしながら、終活に対して最初の一歩が上手く始められないと、お悩みの方が多いのではないでしょうか。
そこで、これ以降は、あなたの「人生設計」とも言えるあなたが終活に向けて、まずは確実な一歩を踏み出すための考え方を6つのステップでご紹介いたします。
①家族とコミュニケーションの機会を増やす。
終活に向けて取り組みを始めるにあたって、話題を切り出すための準備が必要になります。
いくら家族と言っても、いきなり終活の話題というのは困惑されてしまうかもしれません。
終活には踏むべき順序があり、段階を飛び越えて話を進めることは難しいといえます。
ご家族との関係性が心配な場合は、ご家族と離れて暮らしている方やしばらく会っていない方はコミュニケーションを取る機会を増やしましょう。
「今日は良いお天気だけど、なにをする予定なの?」
「たまには一緒にお買い物へ行かない?」
些細な日常会話から嬉しかったこと、悲しかったこと、大変だったこと、心配なこと。
お互い気持ちも話せるようになるまで、少しずつ会話を増やすようにしましょう。
②終活は「物」と「人」で考える
終活では、ご自身の身の回りにあるものを整理していかなくてはなりません。
多くの方が困惑する「モノ」と「人」について考えなければならないのです。
モノの整理
- 今後の人生で必要な物かどうかを判断する。
- 必要はないが、大切にしたい物は誰に渡すかを明確にする
- 大切にして欲しい物は、理由をしっかりと家族と話しておく
必要な物だけ物を減らして、身軽になる方法についてアドバイスする業者も多くいらっしゃいますが、実際は写真や愛読書まで本人にとっては人生を語る上で重要な品物だったりします。
私たちは遺品整理で多くの現場にて、故人の方が大切にしていたであろう品物も、ご遺族の方は「これが大切なのかもよく分からないので捨てて良いです」と、処分を希望される場合もあります。
まず生前整理をする際には「今後使う物かどうか」「捨てられない大切な物はどうするか」「どうしてそれが大切なのか」を明確にしておきましょう。
生前整理を行うと物が減ってスッキリして寂しいという印象を抱く方もおりますが、実際には本当に大切な物だけを残して、これからを充実させるための準備なので、空いてしまったところを埋めるために楽しい思い出を増やそうと元気に過ごす方も多くいらっしゃいます。
今後の楽しみを増やすために、まずは物が減らせるように必要な物とそうでない物を仕分けてみましょう。
ご自身に関係する人たちの情報もまとめておこう
- 連絡先や住所録を整理する
- 普段行っているお店や人の情報を家族に伝える
- 親戚の間柄などを家族に話しておく
ご自身に関係する人たちの情報は終活においても、とても重要です。
あなたは、ご家族が普段どのようなお付き合いをしているかご存知ですか?
とくに離れて暮らしているご家族の方は、両親が普段からどのような人との交流があるかが分からない方がほとんどです。
もし、万が一なにか問題が発生した際、異変に気付けるのは普段交流がある人に限られます。
お世話になっている人や、友達関係などの情報は家族にしっかりと話す機会を設けましょう。
年賀状や暑中見舞いを出す機会がある時には、普段お手紙を出す人などもご家族が把握しているだけでも、葬儀を執り行う際にも重要となりますので話しておく必要があります。
③介護の悩みも終活では重要な要素です。
当事者にとってだけではなく、ご家族や夫婦の間でも、もっともデリケートな話題になるのがおそらく「介護」ではないでしょうか。
本人は子供たちに迷惑をかけたくないと思う方もいれば、長男・長女家族が面倒見てくれるから安心だと思っている方がいらっしゃるように、人それぞれ介護についての価値観は異なります。
または老後のために介護用の貯金や保険を設けている方もいて、老後の暮らし方は人それぞれです。
しかしながら、子供の立場からすると両親の介護は誰が行うのか、という問題は無視できない内容になりますので時間があるタイミングにしっかりと話し合うようにしましょう。
ストレートに聞いてしまうと、本人が不快な気持ちにさせてしまう場合もあるため慎重に話を切り出す必要がありますが、相談するタイミングとしてオススメなのは「病院に行った時」が良いでしょう。
その理由は「健康なうちに考えておこう」というテーマで、本人を気遣うように聞くことをオススメします。
早いタイミングで話し合っておくことで、ご家族全員が安心できる状況も作れると思います。
「考えるにはまだ早いよ」という思いがあるうちは無理に話を進めず、それでも健康なうちに家族で決めておいた方が良いと思います。
④終活ではお墓やお葬式についても取り組む方が多い。
いずれ自分が入ることになるお墓について、夫婦で計画を立てる方も増えていると聞きます。
具体的には以下のような項目についてお話をされているケースが多いように感じます。
- 葬儀の規模や人数などを決めておく
- 葬儀のプランではどこにお金がかかるのかを確認する
- 遺骨をお墓に入れるのか散骨するのか決めておきましょう
やはりもっとも気がかりなのがお金の問題ではないでしょうか。
業者によっては、生前にプランを予約できますが、別途料金などが発生する場合もありますので、お花代などはしっかりと確認するなど考えられる最善の手段を講じておくと安心です。
埋葬方法についても、樹木葬から海洋散骨、永代供養墓に入るなどの手段も存在しているため、要望を家族に話しておくことも重要かもしれません。
あなたご自身の意思を家族に伝える上で、お墓の話題は話のきっかけには良い選択肢のひとつかもしれません。
重要なのはあなたの意思を伝えてみること、そしてご家族に受け入れてもらう心算をお願いすることなのかもしれません。
⑤トラブルとなりやすい相続と遺産を終活で円満解決
次に終活で取り組む方が多い「財産の把握」や遺産で揉めることのないようにするための方法です。
1,000万円以下の遺産について家庭裁判所で調停となっているケースはとても多いようです。
最高裁判所の「司法統計」によると、令和2年度の遺産分割事件のうち、1,000万円以下の遺産で調停になるまで揉めたケースは総数5,846件のうち2,033件※。実に34.8%となりました。
※最高裁判所の「司法統計」の令和2年度「53 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数 審理期間別代理人弁護士の関与の有無及び遺産の価額別 全家庭裁判所」
調停には発展せずとも、相続や遺産関係はトラブルが多いため、早めに話し合っておく必要があるかもしれません。
「家族で争うほど資産ないから」「兄弟の中は円満だから心配してない」
という方もいらっしゃいますが、実は相続は後からトラブルになることがとても多いように思います。
兄弟の仲が良いご家庭でも、後からモメてしまって最悪の場合は絶縁状態になることも!
相続について円満解決する方法は公的な証書である「遺言書」が重要です。
相続についてトラブルを起こさない自信があっても、トラブルが勝手に起こる危険性も十分に考えられます。
資産の額が多寡にかかわらず、家族のために遺言書はとても重要な役割を担いますので、司法書士さんに相談してみると良いかもしれません。
まとめ:手遅れになる前に、あなたと強く生きるための終活
今回は、終活についてお伝えしてまいりました。
まとめると以下のようになります。
- 終活には家族とのコミュニケーションが重要
- 終活は物だけでなく人との繋がりについても考慮して進めることが重要
- 今後のために遺言書や葬儀などできる限りの計画や見通しを立てておく
最後に最重要なポイントは慌てずにゆっくりと時間をかけて行うということです。
終活は時間をかけて、家族とゆっくり行なっていきましょう。
私たちも最大限のサポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。
当記事が終活へ取り組む方への一助となれば幸いです。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。