終活・生前整理 掲載

終活やエンディングノートを別の視点から捉えてみる:ある女性の体験

人に不老不死はありえません。人生を鳥瞰して見ることができる終活は、自分の思い通りの最後だけでなく、自分の人生を新たに見つめ直すとても尊い時間です。
終活について話し合う
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly
  • Pocket

自分自身の終末期を考えるにあたって行う活動を「終活」と言います。

初めて「終活」という言葉が登場したのは、2009年のこと。『週刊朝日』で連載記事「現在終活事情」で登場しました。

2011年10月公開の映画『エンディングノート』で話題となり、その後一般に広く浸透している感があります。今回は改めて、終活についてご紹介します。

プロデューサーは『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭で最高賞となるパルム・ドールを受賞した、是枝裕和氏。監督:砂田麻美氏(2011年10月1日公開)

終活は次の2点に集約される

終活とは自分の終末期に向けて行う活動の事で、主に2点に集約できます。

  1. 自分の最後をどのようにしたいのか考え、伝える
  2. 自分の周りの片付けを行う

エンディングノート:自分の最後をどのようにしたいのか考え、伝える

自分に残された人生をよりよく生きるため、葬儀、埋葬、遺産相続、遺言などを健康な身体のうちに考えて準備しておくというのが定義です。

例えば「葬儀」。あなた(あるいは、あなたのご両親)はどのように送って欲しいのでしょう? 賑やかな雰囲気ですか? いやいやひっそりと静かに送ってほしいと思う方もいらっしゃるでしょう。

さらに、セレモニーとして葬儀を行わないという選択肢だって増えています。しかし、そのお骨はどのようにしたほうがいいのでしょう? 先祖代々のお墓に入りたい、あるいは海に散骨してほしい…

こうした自分の最後をどのように行うかを考え、伝えるために用意するのが『エンディングノート』です。

エンディングノートにどのような内容を書いておくと正しく伝わるのか、その具体的な方法は、以前の記事でご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。エンディングノートを自分で書く方法を詳しく解説します

生前整理:自分の周りの片付けを行う

次に、自分の周りの片付けをエンディングノートに沿って行います。

最近は、老人ホームに入所する前や、ご子息のご家庭で暮らすにあたって家を片付けるといったご依頼を当社で受けることがとても多くなってきました。

生前整理は、終活でも大切な役割を担います。ご健康なうちに、自分の意思に沿ったご実家の片付けができるのが、支持されている理由では無いでしょうか。

こうした生前整理を行う中で、ご家族だけではなく、私たち遺品整理業者も貴重な経験をさせていただくことがあります。

終活は誰のために行うの?

終活は残された家族や遺族のために行うことですが、それだけにとどまりません。

自分のため、さらには、一緒に考える子供のためでもあるのです。

終活を考えるご両親のご子息は、40〜50歳代ではないでしょうか。
80歳代になれば、今までの人生が如何に意義深いものであったか、わかるようになることが多いかもしれません。

しかし、まだまだ仕事が忙しく、家事に忙殺され、子供としっくりこない出来事、上司や給料に不満がある。そんな毎日を過ごしていることも多いことでしょう。

ここで、両親のエンディングノート作成を一緒に行ったある女性のお話をご紹介します。

この方は46歳。結婚することなく、バリバリの仕事人間として邁進している方です。

この方が成人し、自分の人生の舵取りを自身で行うことができるようになると、小さな成功の積み重ねで自信を獲得し、日々さらに働いてきたと話してくれました。

とても凛とした佇まいが印象的な女性で、仕事のことを真正面から受け止め、自分に嘘偽りなく積み重ねて来られた方のようです。

そんな彼女が、夏のある日に帰省すると、両親からおもむろに「エンディングノートを書いている」と伝えられたそう。最初の印象は「『またそんな〜』という感じだった」そうです。

先ほどの「またそんな〜」というのは、言い換えると「まだ早い」と感じたから出てきた言葉なのでは無いでしょうか。

ご実家は、岐阜県の山奥、近くにキャンプ場を併設した清流があり、出かけてはスイカを川で冷やして食べる夏休みの思い出が印象的だったとか。

エンディングノートを真剣に書く母親に寄り添い、昔を懐かしんでいた時、衝撃にも似たものを感じたんだそうです。

それは何か。

幼少期、あんなに印象的な、スイカを川で冷やして食べていた夏を、指折り数えると、せいぜい6〜10回。上京して就職してから、もう20回以上の夏を過ごしてきていることに気づいたのです。

途端に「ちょっと怖くなった」とおっしゃておられました。考えてみれば当たり前のことで、人生90年として、夏は90回しか経験できませんし、その間に両親の毛髪は白くなり、手のシワも目立つようになっていくのです。

そして、「自分の人生もあと40年も無いかもしれない」という当たり前の事実に気づいたと教えてくれました。

彼女は、その後、休みの日を見つけては、これまでダラダラと過ごしていた休みを帰省に使い、今度温泉にご両親と行くのだと教えてくれました。

ものすごく端折って、先日あった出来事をご紹介しました。

この女性は、ご両親がエンディングノートを書くにあたり、ご両親だけではなく、自分の人生を客観的に見直すことができたのです。

人生を両親とともに俯瞰してみることの重要性

自分の人生のラストシーンはどのようなものになるのか…。

終活を始めると、また、そんな両親を見ていると、こうしたことも頭をよぎるようになります。

自分自身の人生を振り返るのは、いつでもできるかも知れません。

しかし、終活を考える経験が、家族や、あなた自身の生活をより豊かにする可能性を秘めていること、そして、さらにご両親との絆をより強くし、残された時間を見つめ直すきっかけになることもあるのです。

関係の悪いままの状況を変えずに、今のままであれば、20年先も今と全く同じ状況かもしれません。

歳をとるだけで、何も変わらない。そんな状況になる前に、ひとつの簡単なきっかけとして終活のことを捉えてみてください。

そんなお話でした。最後までお読みくださりありがとうございました。