「お部屋のお片づけ」が本質となる遺品整理や生前整理では、様々なモノの処遇を考えることが多くなります。
特にお困りな方が多い印象なのが、お洋服。とりわけ「スーツ」は手放さずに、保管しておこうとされるご依頼主の方が多い印象です。
今回は、そんなスーツを、あなたのサイズ感ぴったりにして、今風のトレンドを加味した一張羅にできる取り組みを行う「トーマス」と当社の取り組みをお伝えします。
ご遺品として残されることが特に多い、着物とスーツ。
遺品整理でご遺品として残されることの多い衣類の代表が、着物とスーツです。
ご存知のように、以前は嫁入り道具として着物一式を持たされることが一般的でした。そのため、着物を大切に保管されている場合が多いのです。着物と同様、スーツや外套(コート)も、大切に保管されていることが多い衣類です。
これは、スーツの捉え方が、昔と今では異なることが理由なのでしょう。
総務省統計局の「小売物価統計調査」によれば、前回の東京五輪が開催された1964年(昭和39年)当時、スーツの平均価格は13,600円(現代の価値に換算すると87,496円)。ここでのスーツとは、一般的な秋冬物のシングル上下、総裏・並型の背広服を指します。→註
2009年のスーツの平均価格は34,207円とされているので、当時は、実に現代の2.5倍以上の価値とされていたことがわかります。
こうした背景から、スーツをご両親が大切に扱われていたことは容易に想像できます。
実際に遺品整理や生前整理といった場面で、着物は、大手着物買取業者などが積極的な買取を実施している背景もあってか、保管しておく以外に、ご依頼主の選択肢も多くなってきています。
一方、スーツについては、選択肢がそう多くないのが実情です。
特にご両親が大切にされてきたスーツは、売ったり、処分するなどという選択肢は存在せず、故人を偲ぶ品として親族によって、大切に保管されていく場合が多いことでしょう。
しかし、これらのスーツは、大切に「保管」しておくだけ。実際に、整理完了後のお客様の多くが、「父親のスーツをどうしようか」というお悩みをお持ちだったのです。なんとか、お客様の声に応えることはできないものだろうか、と考えていたところ、とても素敵な取り組みをされている会社に出会いました。
註:「背広服(秋冬物)」 シングル上下 総裏 並型 〔表地〕ウーステッド(毛100%) 中級 〔裏地〕ベンベルグ 1着
「父親のスーツを着たい」という声に応えるサービスが東京にあった。
東急目黒線「武蔵小山」駅から徒歩3分、オーダーメイドのスーツや靴、お直しや修理を行うメンテナンスショップ「トーマス」は、遺品あるいは形見のスーツを仕立て直すサービスを行なっています。お店でサービスの内容について伺ってきました。
出迎えていただいたのは、株式会社トーマス代表取締役の
トーマスさんの取り組みについてのインタビュー
今回、お時間をいただいて、トーマスさんの取り組みについて教えていただくことができました。
──「トーマス」について教えてください。
トーマスは、スーツや靴のオーダーメイドや洋服のお直し、靴やバッグの修理を行なっているメンテナンスショップです。クリーニング店を対象として、高度なお直しの知見を提供する日本リペアコンシェルジュ協会も運営しています。
──今回、お話をさせていただくきっかけとなった「ご遺品のスーツの仕立て直し」について教えてください。
スーツのお直しは、以前からトーマスの主なサービスのひとつとして提供してまいりましたので、特に「ご遺品」のスーツに限定しているわけではありません。
しかしながら、実はあるきっかけがあって、ご両親のスーツを子供が直して着るというサービスを提供しようと思ったんです。
──そのきっかけとはどういうものなのですか。
当店のお客様が「父親のスーツをもらったけど、どうしていいのかわからずクローゼットにしまったままになっている」と仰ったのがきっかけです。
そういうお悩みを抱えている方がいらっしゃるということは認識していませんでした。
──そうですね。捨てるなんて選択肢はない。だけど、なんとかして活用したいという気持ちは、とてもわかります。
そうですね。
トーマスで日々行なっているお直しの知見を、お客様のために活かすことができると感じました。
そこで、早速、お父様のスーツをお預かりし、お直しをさせていただいたところ、「父のスーツを着られる!」と、とても喜んでいただけたのです。
──素晴らしいですね。
はい。とても喜んでいただけたのが印象的で、その姿がずっと(心に)残っていたんです。
そこで、こうしたニーズがあることを知り、積極的にお手伝いできないかと考えたんです。
──確かにニーズは多いのかもしれません。活用という観点とは別に、お父様のスーツを着ると、見守ってくださるとか、何かパワーのようなものを感じるからということもあるのでしょうか。
人それぞれだと思いますが、まだこの仕事に就いてまもない頃、「なぜこんなに汚れたものを直すのか」と疑問に感じることがありました。
しかし、今となっては本当によくわかるのですが、洋服にはそれぞれの方の、その洋服についての思い出があるのです。
娘さんが初任給で買ってくれたスーツですとか、初めての仕事で袖を通した背広など、そこにはその人の思いがあり、人となりが現れてくるように思います。
──なるほど。確かに父親のスーツを着られるとなると、自分にとっても特別なものになりますね。
その通りです。
それぞれ1着1着に対して思い出が残っている。お直しを行なって自分が身につけることで、この思い出をずっと引き継いでいくことができます。
こうしたお手伝いができたらとても嬉しいです。
──ありがとうございました。
お話の中で、実際に依頼する手順などについても丁寧に解説していただき(後述)、鴫原様のスーツに対しての愛情、時間をかけてじっくりと良いものに仕立て上げていくというプロとしての立場を強く感じるインタビューとなりました。
また、実際にお客様が預けられた仕立て直し前のお父様のスーツを拝見することもできました。
仕立て直しのスーツの中には、とても高価なものや貴重なものもあるとのこと。
しかし、預けられるスーツの品質よりも、その裏側に含まれる家族の思い出や人となりを感じる瞬間が最も印象的だということでした。
実際に依頼する際の手順
最後に、実際にトーマスさんにご遺品や、ご両親の衣服のお直しを行う場合の注意点や方法をご紹介いたします。
お直しにができる対象の衣料は、以下のようなもの。
- スーツ
- 礼服
- ジャケット
- コート
そのほかにも、小物や身につけていたもののお直しの相談を承ってくれるそうです。
店舗持ち込みが原則。必ず採寸する。
サイズを合わせる作業が必要なため、店頭への持ち込みが原則となります。
この採寸がとても重要な作業。その理由は「同じスーツは二つと無い」のが理由だそう。
例えば同じサイズのスーツを何着か持ち込んだとしても、細部のサイズに異なるポイントがあるということでした。特にスラックスは、股上がちょっと深かったりすると、腿のあたりがもたついたりしてくるのです。
普段どんなシーンで身に付けるものかによってもお直しのサイズが異なるため、持ち込まれたスーツ1着1着を丁寧に採寸して仕上げていくのだそうです。
大切なスーツにお客様のイメージとお店側にズレが生まれないよう、丁寧な採寸を欠かさないと仰っておられました。
1着の採寸にかかる時間はおよそ10分程度とのこと。
採寸後は、お店に預けて待ちます。仕上がりまでは1ヶ月とのことでした。
お直しのポイントや注意すべきこと
お直しに当たって注意すべきことは、当たり前のことではあるのですが、大きいサイズを小さくする、つまり、大→小は比較的無理なく行えること。つまり、小→大は難しくなります。
ただ「外套」と呼ばれるようなオーバーコートは、サイズが合うことも多いとのこと。
例えば、ご子息よりも恰幅の良いお父様から譲り受けられたスーツ一式を今風のトレンドに合わせてご子息が着るように仕上げるというのが一般的でしょう。
残念ながら、すでに一定のサイズ感で存在するスーツを仕上げるため、体型が親子で異なると諦めないといけないケースもあるようです。
こうしたことを事前に見分けるポイントは、肩幅。
「スーツは肩で着る」ため、肩幅があっていること、袖の長さや着丈、脇の幅が重要になってくるとのことでした。
仕立て直しの料金
仕立て直しにかかる料金は、以下の通りです。
スーツフルセット一式 | 25,000〜35,000円 |
---|---|
部分的な修繕や袖直しなど | 12,000〜20,000円 |
これ以外にも、小物やスラックスだけ、など幅広いサービスに対応しています。
お問い合わせについて
これらのサービスは、横浜ベスト遺品整理社でご依頼いただいたお客様に、遺品整理や生前整理と合わせてご提供させていただくことが可能です。
遺品整理や生前整理をご検討のお客様で、スーツ等のお直しサービスをご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
また、遺品整理や生前整理以外のお家のお片づけや、作業後にスーツを仕立て直しされたいという方、または一般的なスーツのお直しの詳細については、トーマスさんへお問い合わせください。。
「トーマス」のお問い合わせ先
- 店舗名
- ファッション総合メンテナンスショップ「トーマス」
- 住所
- 〒142-0062 東京都品川区小山3-21-7
- 営業時間
- 10:00〜19:00(定休日:水曜日)
- 電話番号
- 03-5750-1625
- ホームページ
- http://thomas-repair.jp/
まとめ
鴫原さんのお話でとても興味深かったのが「思い出を引き継ぐ」という言葉。
これは、横浜ベスト遺品整理社の遺品はゴミではく、人にもモノにも心があるという信条と一致します。
あくまでも片付けの業者や仕立て直しをする人間の目線になりますが、高度経済成長以後、使い捨てのように「消費」するだけの文化にどっぷりと浸かってしまっている私たち。
大手家具・家電メーカーの新製品は、今使っている製品を直すよりも買ってしまった方が良いと思うような価格設定だったりします。
しかし、生前整理のポイントでもお伝えした通り、いいものを長く使う、という視点は、これからの時代でとても重要視されていく考え方でしょう。
横浜ベスト遺品整理社に遺品整理や生前整理をご依頼いただいた方には、今回ご紹介したトーマスさんのようなモノに対する溢れる愛情を注ぐ力強いパートナーも、お客様のそばにいることをお知らせしたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
さらに、今回取材のご協力をいただいた株式会社トーマスの鴫原様、店舗スタッフのみなさま、ご協力いただきまして、ありがとうございました。