自宅や実家が不運にも火を出したり、火災に遭ってしまったりした場合、消化後の後処理についてどのように進めるべきなのかは、多くの人が気になるところだと思います。
しかしながら、実体験に基づく詳細な解説はあまり見かけたことがありません。
私たちは、特殊清掃という形で火災現場の清掃に当たることもしばしばございます。
今回は、万一、火災により被害にあってしまった場合の諸手続きを中心に火災後の後処理について、どのように進めるべきなのかをまとめました。
今回の記事では、火災後のお片づけについてご紹介するわけですが、もっとも大切なのは、火災を起こさないための日頃の取り組みにあることはいうまでもありません。
火災後の現場には有害物質が残留していることも。迅速な対処を。
火災後の対応は迅速かつ適切な方法で行わなくてはなりません。
火災後のリスクとして直後には一酸化炭素やシアン化水素といった有害物質が残留していたり、火災で発生した煙や煤(すす)によって、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、火災で損傷した物品や建物は、特別な処分方法や修復方法が必要なケースも多く、専門的な知識を持つ清掃業者に依頼するべき内容だと言えるでしょう。
放置するといった状況は避けなければなりません。
具体的な火災後の後処理の流れと注意点
火災後の後処理については、おおまかに以下の4つのポイントに注意が必要です。
- 火災現場における安全の確認
- 火災保険の申請
- 火災後の諸手続き
- 火災後のお片づけ:火災で損傷した物品の仕分けと処分
それでは、それぞれのポイントについてくわしくお伝えします。
火災現場における安全の確認
火災現場では慎重な行動が求められます。
火災を起こした住宅の倒壊や部材の落下の危険があるだけでなく、有害物質が残留している可能性もあるからです。
当然ながら、消防や警察の方々の立ち入り許可が出るまでは現場に近づかないようにしましょう。
立ち入りが認められた場合でも、火災現場に立ち入る際には、長袖・長ズボン・手袋・マスク・帽子を着用し、ケガをしない服装で確認を行いましょう。
ご自身で不安な場合には、専門家に任せるのも大切な考え方です。
火災保険会社への連絡と申請
火災となった建物が対象となる火災保険を契約している場合には、火災保険会社へ速やかに連絡を行いましょう。火災保険の契約時に設定した保険金額の全額を受け取ることができます。
保険証券が消失していても、本人確認を行なって手続きを行なっていただけるのが一般的です。
仮に全焼の場合には、契約時に設定した保険金全額の支払いが行われるケースが多いのですが、契約内容によって金額は大きく異なります(建物評価額や経過年数等)。
また、いわゆる「もらい火」による火災は火元から賠償されるケースは少ないようです。隣の火事によって自宅が燃えた場合には、自分の家の火災保険を利用することになるのが一般的です。さらに地震による火災や、火災を起こした人に重大な過失(明らかなタバコの不始末や天ぷら油を火にかけたままなど)がある場合には、保険金が支払われないケースもあり得ます。
この記事をお読みで心配な場合には、契約内容を確認しておくと良いでしょう。
火災後の手続き:火災罹災証明書の取得など
保険以外にも火災罹災証明書の取得など、火災後にやらなければならないことはたくさんあります。
なお、火災を起こした場合、一般的には消防などから費用請求はありません。
火災罹災証明書の取得
火災罹災証明書とは、消防署が発行する証明書で、火災保険の保険金請求時や後述する税金の減免や建物登記などの手続きに必要な書類です。
消防署から「罹災届」を提出するよう求められたら、必要事項を記入して提出しましょう。
建物の滅失登記について
全焼した場合には、火災にあった建物の「滅失登記」を法務局で行う必要があります。
滅失登記を行わない場合には、固定資産税がかかったままになりますので注意が必要です。
火災保険の申請の場合に登記が必要となる場合もあります。
延焼させてしまった場合のお詫び
故意や重大な過失のある火災でない場合、「失火責任法」という法律によって、一般の火災で近隣に燃え移ってしまった場合でも損害賠償責任はありません。(賃貸の場合には大家に対して損害賠償の責任があります)
ただし、炎症させてしまった近所の方へはしっかりと誠意を持ってお詫びをするのが良いのはいうまでもありません。
電話・ガス・水道・電気になどへの連絡
電話・電気・ガス・水道などの公共サービスは、火災後に停止される場合があります。
各サービスの停止状況や再開方法については、各会社に連絡し、確認しておきましょう。仮に、再開する場合には、修理や点検などが必要な場合があるため、早めに手配しておくことが大切です。
消失した重要書類や貴重品の紛失・焼失についての対処
実印・預金通帳・保険証券・運転免許証・クレジットカードなどの貴重品が紛失・焼失した場合は、再発行や再取得の手続きを行いましょう。再発行や再取得の手続きは、各発行機関や窓口によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
また、火災後に貴重品が盗難された場合は、警察に相談しましょう。
また、重要な書類の再発行などについては、以下の表をご覧ください。
所得税の減免
火災で住宅や家財に損害を受けた場合には、所得税が減免されることがあります。
所得税の減免を受けるためには確定申告が必要で、所得や損害額によって控除額が異なります(雑損控除・災害減免法)。
所得税の減免の条件や方法については、お近くの税務署などに相談すると良いでしょう。
参考:【確定申告書等作成コーナー】-雑損控除と災害減免法による軽減免除の違い
火災後のお片づけ:火災で損傷した物品の仕分けと処分
火災後のお片づけは状況によって3つのパターンに分けられます。
- 小火
- 半焼
- 全焼
なお、自治体によっては火災や天災の被害によって出たゴミは、処理手数料が免除になります。
参考:横浜市「火災や、天災等の被害により生じた一般廃棄物の処理手数料の減免について」
小火の場合の片付け
ぼやの場合には被害は小規模かもしれませんが、すすの除去や消臭作業が必要です。
火事の後の焼けこげた匂いは完全に消去するのが難しいケースもあることから、リフォームなどを考えなくてはならないケースも少なくありません。
半焼の場合の片付け
半焼の場合には、解体も考慮に入れた作業の計画が必要です。
解体しない場合でも、リフォームが前提となる場合がほとんどです。
個人や家族での対応が困難なケースも少なくないため、専門業者に依頼するのが良いでしょう。
半焼の場合には、一般人が自由に出入りできるような状況になっている場合があります。
盗難などに遭わないよう、貴重品や思い出の品は専門家の協力を得ながら、ケガに十分注意して早めに取り出しておくと良いでしょう。
全焼の場合の片付け
全焼の場合には、解体を前提に作業計画を立てます。
全焼での解体は、依頼できる業者が限られ、解体金額も一般的な解体よりも高額になる場合がほとんどです。
対応できる業者を3社程度探して、現地調査・見積もりを行ってもらい比較した上で決定すると良いでしょう。火災保険金などを充てることができる場合もあるかもしれません。総合的に判断することが大切です。
なお、火災による被害を受けた建物の解体作業を行うには、その事業者が解体業の届出を行っていることが必要です。また、火災で発生したゴミの廃棄には、特別な許可証である「特別管理産業廃棄物収集運搬許可証」が必要です。
身近な火災だからこそ、リスクに備えておこう。
火災は突然起こり、想像以上の被害をもたらすことがあります。
消防庁が2023年5月16日に発表した「令和4年(1~12月)における火災の概要」には「総出火件数は、36,375件でした。これは、おおよそ1日あたり100件、14分ごとに1件の火災が発生したことになります。」と書かれています。
そのうち、建物火災は半数以上の20,185件。14分ごとに1件は決して他人事ではないことを物語る数字と言えるでしょう。
火災の際に備えておくのもとても重要なことがわかります。
とくに、住宅火災の死者は1,012人で、そのうち、65歳以上の高齢者は実に75.1%を占める692人だったとのこと。もっとも多い死亡原因は逃げ遅れの407人でした。
高齢者の住む世帯では、日頃から火災に備えた準備を行なっておくことが肝要です。
参考:消防庁「令和4年(1月~12月)における火災の概要(概数)について(PDF)」
まとめ
今回は、火災となってしまった場合の後片付けについてご紹介しました。
できれば直面したくない事態であることは間違いありません。
しかしながら、火災となってしまった場合でも、現代は多くの解決策とこれまでに培われた知見によって、救われる制度があります。
ショックのあまり、悲観的になりすぎないよう、やるべきことにしっかりと注力できるように落ち着いて手続きと作業を行っていただけるよう、祈っております。
この記事がお悩みの方への一助となれば幸いです。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。