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親の家はどうするべきなのか:相続税以外に注目すべきポイント

早々と考えて行動できればいいけれど、なかなか行動に移すことができず、実際に親の家をどうするべきなのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。今回は、ご両親の家の対策を賢く行うための具体的な方法をご紹介します。
日本家屋の庭先の画像
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「ご両親が元気なうちなら費用も手間も精神的にも楽」という情報が氾濫する昨今、こんな情報を目にするだけで「早くやれるならやっている」とお考えの方がほとんどなのではないでしょうか。

「実家を解体することにしたのだけれど、結論が出るまでに3年かかった」というお声を多数いただくのが現実です。

相続税対策を中心に語られることの多い親の家の対策方法について、見落としがちなポイントもご紹介いたします。

お悩みの方の一助となれば幸いです。

親の家をどうするかは、売却するか、相続するかの2択で考える

親の家を具体的にどうすればいいのかは、大きく2つの選択肢に絞られます。

売却か、相続してご両親が残してくれた実家や土地を再利用するという選択肢です。

売却する場合にも、相続する場合にも、それぞれ場合によって異なる注意点が存在します。

例えば、土地付きの一戸建てを売却する場合には、建物つきで売るのか、それとも更地として売るのか、という判断が重要なポイントになります。

詳しくは「初めて空き家問題に取り組む人が知っておきたい4つの解決策」にてご紹介しています。

以上の記事を簡単にまとめると、以下の表のようになります。

用途メリットデメリット
住む自分や親族が新たに住める。
思い出のある実家を残しておける。または別荘として利用できる。
100万単位の維持費が発生する。
修繕が必要な場合、大きな出費が予想される。
賃貸で利用する収益を出すことができる可能性がある。修繕など、維持管理の責任を負うこととなる。
不動産賃貸業として事業税・所得税や住民税が発生することもある。
中古住宅として売却移住者に好まれるケースが多い。解体費用がかからない。修繕で売却にかかる経費が膨大となる可能性がある。
築20年以上の木造家屋の場合、住宅ローン控除の適用を受けることができない。
更地として売却する使用目的が複数考えられるため買い手がつきやすい可能性がある。固定資産税の特例が受けられなくなり、最大で固定資産税の支払額が6倍になる。

親の家を対策するならいつからが良いのか

具体的な方法論に移る前に、こうした親の家に対しての処遇を決める時期はいつ頃が良いのでしょうか。

リクルートが運営する不動産仲介などの情報サイトSUUMO(スーモ)に「みんなの実家対策を聞いてみました-データ・口コミまとめ」という記事を見つけました。

文中では、実際に実家の対策を行った口コミのデータを紹介しています。

トップの理由は「相続税」に関連するもの。相続税を少なくするという理由がトップでした。

やっぱりご両親がお元気なうちにやっておいたほうが良い

次に実家の対策を行ったタイミングとして「両親の健在なうちに」と答えた人が47%と報告されています。

理由として、相続の問題であることは明らかです。

普段は「兄弟で仲が良いから」と感じている方も、いざ相続での話し合いとなると罵り合いばかりだった、というのは残念ながら良く伺うお話です。

骨肉の争いとならないように対策するためには、少し生々しいお話になりますが生命保険などを利用するなどして「代償分割」という方法があるそうです。不動産が相続の対象となった場合、相続人で平等に相続をするために、相続人のうち1人が不動産の現物を相続し、他の相続人が現金を受け取るという方法です。

親の家をそのままにしておくだけで格段に高まる空き家のリスク

特に土地付きの一戸建てを相続した場合、親の家を手つかずのまま、そのままにしておくことは避けたほうが賢明です。

家屋は人が住まないと劣化が進んでしまい、あれよと言う間に深刻な事態となりかねません。

空き家問題は少子高齢社会において深刻な問題となってきており、法整備も進んでいることから、注意が必要です。

仮に「特定空き家」に指定され、行政による介入があった場合には、解体費用の請求等が行われるケースもあります。

伸び放題になった庭の雑草や植木に、物置に置かれたものについての放火のリスクなど、目が届きにくい空き家で起こるトラブルにも十分に注意しましょう。

加えて、何もしないだけでも土地付き一戸建てには多くのコストがかかります。

不動産は住まなくてもコストが発生することは、予め良く認識しておいたほうが良いでしょう。

そして、そのコストは意外と無視できない金額となるのです。

ご両親の家の相続対策にはどのような方法があるのか

先にお伝えした通り、実家については、相続か売却が選択肢になってきます。

いずれの場合にも、信頼できる業者を見つけておくことが先決です。

家族の意見をきちんと反映してもらえなかった、という最悪の事態を避けるために、複数の不動産業者にコンタクトを取り、計画を立てて進められることをお勧めします。

なお、「とりあえず共有名義にしておこう」などと、とりあえず、で結論を出さないようにしましょう。

売却の場合にも、実家を利用する場合にも良いことがあまりないからです。

特に売却に方針転換して買い手を探そうにも、共有の名義だと不動産会社さんから難色を示されるという事例もあるようです。

あなたや親族は良かれと思って、結論を保留にするイメージで「とりあえず」共有の名義にしたり、親族の誰かが管理すると約束できたとしても、後になって大問題となりかねません。できるかぎり、話し合いを尽くして結論を出すようにしましょう。

引き続き居住スペースとして利用する選択肢の場合に注意すること

実家を相続して最初の選択肢となるのが「自分で住む」場合や「別荘として利用する」という選択肢です。

実家を居住スペースとして利用する場合、まず第1に考えることは、老朽化による修繕の必要性です。

一つの判断基準として築年数30年程度が目安となると言われています。

築年数が数十年も経過していると、雨漏りや給湯器の故障など、修繕が必要となるケースがほとんどだからです。

いざ修繕箇所の見積もりを複数の業者に依頼した時、数百万円以上の見積もりを提示された、というケースは珍しくありません。

住み続ける場合の費用の捻出や、維持する場合の固定資産税といったコストがポイントになってきます。

賃貸に出すという選択肢

居住スペースとして有効利用できない場合に考えられるのが賃貸利用です。

自分の生家が形として残り、家賃収入を得られる可能性もあります。

しかしながら、新たに借りてを見つける場合、きちんと修繕を行った上で、不動産仲介業者による内見で、借主に良い印象を持っていただかなくてはなりません。

住環境が飽和している中「誰もが住みたい」と感じる魅力的な物件でもない限り、非常に厳しい経営を迫られる可能性も覚悟しなくてはなりません。

仮に、リフォームの費用などの目処が立ち、借りてくれる方を見つけることができても、賃貸は不動産賃貸業になりますから、所得税や場合によっては事業税、住民税が必要となる可能性があります。

加えて、固定資産税や都市計画税は、家を貸し出したとしても引き続き支払うことになるので注意しておきましょう。

また、賃貸の場合には、維持管理の責任を負う必要がある点も考えておくべきでしょう。

売却するという選択肢

自分が住むケースや、賃貸利用を選択肢として考えられない場合に、売却を検討される方もいらっしゃるかと思います。

近年では中古住宅を購入してリノベーションされる方も多いようです。

以前は築30年以上の木造住宅は売却時に更地にすることを条件に売られる場合も多かったように記憶しています。

中古住宅として販売する場合、解体費用の負担はありませんが、価格を設定するときには、買主が解体を行う可能性を考慮して値段をつけるのが良いでしょう。木造家屋で築20年以上となると、住宅ローン控除を受けることができないため、価格が重要となってくるのです。

そのほかに、更地にして売却する場合には、解体費用を売却にかかる経費として課税対象となる譲渡益から差し引くこともできます。

いずれの場合にも、売却には、売れる前に発生するコストがかかりますから、売却にかかる経費は抑えて賢く処置できるようにしたいところです。

なお、抵当権等が設定されている場合には、抹消することを忘れないようにしましょう。

こうしたことを、ざっくばらんに会話できる信頼できる不動産業者を見つけておくと心強いでしょう。

特別控除が受けられる3年という期間

また、結論として実家を売却する、となった場合、3年以内に売却を完了させると控除を受けられる可能性があります。

ご両親が元気なうちに実家の相続についての問題を解決できなかったとしても、相続発生から3年以内であれば、売却に対して3,000万円を控除できるという特例が存在するからです。

一般的に、ご自身が現在住んでいる家を売却した時には、譲渡した利益に対して最大で3割の所得税がかかります。その意味で、この特別控除が受けられる期間に売却をされるのが良いと考えられます。

これは空き家以外にも更地の場合にでも使うことができます。

相続放棄をすれば問題ないという誤解

ご覧の皆さんの中には、不動産が相続の対象であっても、相続放棄をすれば問題ないだろう、とお考えの方もいらっしゃるかと思います。

しかし、これも注意が必要です。

相続放棄を行えば、不動産がすぐに、そのまま国の持ち物になるわけではないからです。

乱暴に解説するなら「売り手の見つからない土地や建物は、国も引き取れない」といったところでしょうか。

地方自治体の収入源である固定資産税は重要な財源ということも関係しているかと思います。

ましてや、国や地方自治体が税金を投入して引き取った不動産を管理することは難しいと言わざるを得ません。

不動産の相続放棄を行う場合、一般的には弁護士さんに依頼して、財産管理を委託しながら申し立てを行うことになることでしょう。この時点で数十万円の費用が発生するケースもあると聞きます。

名義変更ができない場合には、固定資産税の負担はずっとし続けることになります。

ですから、相続放棄すれば問題ない、と安易に考えてしまうと、大きな負担増となるケースもあることには注意しておきましょう。

単純に相続税の対策として、ではなく、親族の総意として、どうすべきなのか

結局、築年数が相当に経過した木造住宅の場合には、やはり中古住宅としての売却がベターな選択肢と見る方が多いように感じますが、それはあくまでも一般的なお話。

様々なリスクを考えると、結論としてお金の問題に帰着しがちな相続の問題について、親族の総意を形成することの重要性が見落とされていると言わざるを得ません。

メディアで取り上げられた事例を見て「そんなことで悩むなんて」とか「うちの場合にはこんなことにならない」というように捉えがちですし、それはむしろ他人事で、当然のことと言えるのですが、実際に問題に直面すると、支払わなければならない税金や、コストに目がいきがちです。

しかしながら、よく話し合える環境を作り出すことそのものが実家の問題を解決する根本的な解決策であることを忘れてはいけません。

どのような選択肢もメリットとデメリットが存在するからです。

実家の利用を考える場合でも、売却を考える場合でも、信頼できる不動産業者や司法書士さん、税理士さんに幅広く相談し、情報収集を行いましょう。

その上で、家族や親族の関係者全員で話し合って急ぐことなく、しかし計画的に、結論を出されることをお勧めしたいと思います。

不動産に関わる相続については状況によって最適なケースが異なることも多いです。今回ご紹介した不動産についてのご相談は当社でも承りますので、お気軽にお声掛けください。

お悩みのお客様にとって、この記事が解決の糸口になれば幸いです。

最後までお読みくださいましてありがとうございました。