実家・自宅のお片づけ 掲載

進まない実家のお片づけは「防災」を理由にすると上手くいく

散らかっている両親の家を片付けようとした時、反対を受けて作業が進まないとか、実家のお片づけを会話に切り出しにくい、という経験はありませんでしょうか。これまで500件を超える生前整理の現場に携わってきてわかったのは、ちょっと視点をずらしてみることでした。
防災無線の画像
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ご両親と離れて暮らす核家族が一般的になった昨今では、ご実家のお片づけはご両親が行っているという現状があります。

ご両親の体力的な問題で、掃除そのものが難しくなり、散らかり始めてしまうという例も少なくありません。

ご家族の健康で安全な生活を守るために、子供世代が両親のため、積極的に片付けを行おうと決心し、いざ作業に取り掛かろうとすると、猛反対された、という話を少なからず伺います。

実家のお片づけは防災と言おう

冒頭ご紹介したような、なかなか両親の協力を得られない場合には「防災」や「安全のために」という目的を示すのが、一つのポイントになります。

部屋を片付ける必要性にご両親も気づいているとはいえ、すでに別の家で生活している子供にとって、ご両親の家は「他人の家」なのです。

ちょっと頑固なご両親でも積極的な話ができる「防災」というキーワード

そのため、話を一般化して「防災」というキーワードに落とし込むことで、理解を得られるケースは多いように感じます。

実際にそのようにお伝えしてスムーズに片付けが進み、ご両親にもご満足いただいたケースもありました。

生前整理として作業の物件に見積もりに伺うと、一戸建てのご自宅でも、自分が生活する最低限のスペースに、ものが集められているワンルームのような暮らしをされている方を見る機会も非常に多いのです。

視点を「防災」にすることで片付ける大義が生まれる

例えば、自分の布団やベッドの周りに、生活用品が置かれていて、動線はトイレやお風呂場への移動のみであることが往々にしてあります。

このようなケースでは、地震発生時に積み上げられたものが崩れて逃げる動線が確保できなくなるだけでなく、高いところからタンスが倒れてきたり、テレビが倒れるなど、大きな危険が伴います。

ただ単に「散らかっている」という理由では、なかなか納得してくれなかったご両親も「防災」という視点で子供と一緒に考えることで、驚くほど協力的になっていただけるケースを目の当たりにして参りました。

家屋・家具による圧死の危険は想像以上

2020年は、犠牲者6,434人となった阪神大震災から25年になります。

第二次大戦後2番目、東日本大震災に次ぐ被害となった阪神大震災。発生時刻は冬の早朝、1月17日5時46分52秒でした。

ここに、驚くべきデータがあります。

NHKによる死体検案書の分析により、地震当日1時間以内に亡くなった方のうち、9割が圧死や窒息死だったとされ、その数は約3,400名にもなるというのです。(NHKスペシャル取材班著『震度7 何が生死を分けたのか -埋もれたデータ21年目の真実- 』 44-48頁)

このことについては、以下の記事でも触れられています。

ビジネスジャーナル「阪神大震災、死因の9割が家屋・家具による圧死等…寝る部屋に背の高い家具は絶対NG

阪神大震災といえば、火災旋風などの映像が目に焼き付いていますが、3,000名を超える方が亡くなった理由が火災以外だったことには本当に驚きます。

まだ早朝だったことも理由の一つになるのでしょう。

生活スペースの安全を保つことは、大切な家族の命を守ることに直結すると考えるべきなのです。

実際に実家のお片づけを行うには

防災を一つの理由として、積極的にご両親の協力を得てお片づけを行う上で、欠かせないポイントは他にもあります。

「捨てる」と言ってはいけない

ご実家の整理で言ってはいけない言葉は「捨てる」という言葉。

生前整理や終活が失敗する原因:これを言うから作業が進まないのです。」にもご紹介していますが、捨てるという言葉は、ご両親の大切なものを処分するというニュアンスが強く出てしまい、言葉としてよくありません。

「手放す」と言い換えて、ご両親の気持ちに寄り添い作業を進めましょう。

生前整理を実際に体験した人の声を聞こう。

当社のブログ記事で生前整理を実際に行った方の体験談をまとめています。

想定外の事態に対応し、限られた時間の中でご実家の整理を円滑に進めるために「今のご実家を把握する」ためのお片づけが重要です。

次に使ってくれる人のことを想像する

ご実家の整理では「買取」などを利用して、次に利用する方の姿をご両親にイメージしていただくのも重要なポイントです。

現在では、メルカリやヤフオク!、ラクマといったインターネットでのオークションなどに出品される方も多いでしょう。

こうしたサービスを活用して、単純に捨てるだけではなく、買取を利用することは、次に使ってくれる人のことを想像することで、円滑な整理が行えるポイントになります。

ご両親と子供世代では、見ている世界や視点が大きく異なることを理解しよう

非常に繊細な問題ですが、ご両親と子供世代では、決定的な視点の違いが存在します。

例えば、子供世代がなかなか実感しづらいものとして、ご両親の体力が低下してきていると感じていることや、体力の低下などの問題を自分自身で向き合う勇気というのも必要でしょう。

年々体力が減っていくという実感は、若い頃との差を見せつけられているようで、大変辛いものです。

また、ご依頼いただく遺品整理・生前整理のシーンでも、親と子供で決定的に異なるモノへの感情が問題となることは、少なくありません。

ご両親の体力や感情・精神面への理解は、子が「できている」と思っていても、なかなか寄り添うことが難しいポイントだったりします。

まとめ:ご家族の健康で安全な生活を守るお片づけ

生前整理というと仰々しくなりますが、本質は「お片づけ」です。

お片づけのメリットは、安全で健康な生活を保証するといった点で計り知れないほど大きなものです。

また、自然と家族での会話も生まれ、よいひと時となるのではないでしょうか。

また、遺品整理とは異なり、生前整理やご両親のご協力によるご実家の片付けは、ご両親の意思を最大限に反映させることができるのです。

長くお片づけを承っておりますが、生前整理を行われている方は、非常に前向きかつ、清々しく作業に当たられているのが印象的です。

「断捨離」と捉えたり、「防災」と捉えることで、ご両親と素敵な時間を過ごし、また、健康や安全な生活を担保できるのが、実家の整理の大きな利点だといえます。

日々ご多忙な方も多いかと思います(私だってなかなか思うように実家の整理ができていません…)が、ご実家のお片づけをご両親と一緒に進めてみることは、とてもよいひと時となることでしょう。

最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。