終活・生前整理 掲載

自分で作るエンディングノートの書き方と活用方法

エンディングノートは万が一の際に家族へ伝えたい内容をまとめるためのノートです。遺言書とは違い法的拘束力はありませんが、自由に書き記すことができ、自分自身の考えをまとめるのに最適です。
万年筆とノート
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly
  • Pocket

エンディングノートを自分で作成する場合に、どのような情報があれば安心なのでしょうか。

エンディングノートを自分で書く際に問題となるのは、「どこまで書けばよいのか」ということです。

書籍やインターネットの情報を見ても、なかなかわかりやすい情報にたどり着くことができませんでした。

今回は、「残された家族が必要な情報」を残すという観点から、「自分史」や「エンディングノートを要した背景(たとえば、複雑な家庭環境で後々トラブルとなるようなことが想定される場合)」を除いた形でご紹介しようかと思います。

エンディングノートと遺言書の違い

エンディングノートと遺言書の大きな違いは法的拘束力の有無です

エンディングノートは様式が定まっておらず記載する内容を自由に決めることができます。

一方、遺言書は主に自分自身の死後における財産について明らかにすることが主目的であり、民法で定められた形式に沿って作成しないと法的な効力が無効となってしまうケースがあります。

一般には公正証書遺言を司法書士に依頼するなどして作成することとなります。

 法的な力様式作成にかかる費用
エンディングノートなしなし0円〜 ※すでに項目が印刷されたものもあります。
遺言書ありあり ※様式を満たさない場合、無効となる場合があります。
  • 自筆証書遺言:0円〜
  • 公正証書遺言:数万円〜
  • 秘密証書遺言:数万円〜

このようにエンディングノートと遺言書はその目的が明確に異なります。

遺言書が死後の財産分与について書かれているのに対し、エンディングノートは自分の死後だけではなく判断能力が低下した場合など生前の治療方針や介護方針についてあらかじめ明文化しておくことができるのです。

エンディングノートは自分の意思を見える化できる

法的拘束力がないエンディングノートを書く意義とはなんでしょうか。

ひとつは遺言書がない状態でも、型式ばらず簡潔に自分の意思を伝えられる手軽さにあるといえるでしょう。

自分の考えている内容を様式にとらわれることなく、順不同で書いていける手軽さは遺言書にはないものです。

また、エンディングノートがあることで、ご家族への負担を軽減することができるでしょう。

人が亡くなった後の書類の提出や生活サービスの契約解除など雑多な事務作業は「死後事務」と表現されますが、ご家族にとって慣れない書類の提出や具体的な作業は大きな負担となり得ます。

こうした死後事務では「情報を探す」ということそのものに時間的、身体的に大きな負担を強いることになるかもしれません。そこで、エンディングノートに情報を集約することで情報を明文化し、負担の軽減に寄与できる可能性があるのです。

さらに、エンディングノートの利点は自分の意思を可視化できることにあると言えます。

普段の生活ではなかなか自分の意思を書き出したりすることは少ないものです。

エンディングノートを目の前にして、書き進めていくと自然と棚卸しをしているような気持ちになり、自分の意思を見える化できます。

さらに自分自身の経済状況がわかるというメリットもあります。資産を明確にしておくことによって、今後をどのように暮らしていくのか見つめ直す機会にもなることでしょう。

自分のこれまでの歩みを振り返ることのできるエンディングノートは、自分自身との対話のひとつでもあるのです。

エンディングノートを書く前に

エンディングノートを書く意義は自分自身で誰にも邪魔されずに、自分の意思を好きに書き記すことができるという点にあります。

このことは今後遺言書を用意しようと考えている方にとっても役立ちます。

エンディングノートを書く中で、自分の意思や財産分与についての考えをより明確化することができ、遺言書作成前に考えをまとめる一助となることでしょう。

エンディングノートを書く前に重要なことはルールにとらわれることなく、自分の好きなように書き記すことです。

以下、エンディングノートに記した方が良い内容をお伝えしますので、参考にしていただきながら一度エンディングノートを作成してみていただきたいと思います。

なお、エンディングノートは記入する項目が明示され、市販されているものも存在します。

ある程度形式のあるほうが書きやすいという方は、市販のエンディングノートを購入して作成する方法も検討すると良いでしょう。

重要なのはまず「書いてみること」です。すべての空欄を埋めなくても、自分の書きたい項目だけを書くこともできるのです。まず取り組んでみることは何よりも重要な一歩と言えるでしょう。

基本となる情報

エンディングノートを準備しようとする際に、ご自身が知っている情報をご家族が知らないという場合は非常に多くございます。

基本情報

ご本人の意思を正確に伝えるため、基本の情報は必ず残しておきましょう。

  • ご自身の名前
  • 住所
  • 固定電話の番号
  • 携帯電話の番号
  • 本籍地
  • 現住所

エンディングノートによっては、戸籍謄本を1通用意しておくことを推奨しているものもあります。

家系図や、お付き合いある方との関係も図式にしておかれると、葬儀の際などのトラブルを避けることができるでしょう。

遺言書が書かれているかどうか

エンディングノートを書いている時点で、遺言書の存在が確定している場合には、その内容を書き記しておきましょう。遺言書の存在が、残された家族に知られていない場合には、遺言書通りの財産分割が行われなかったり、遺言書の存在を家族が探さなくてはならなくなります。

  • 用意している遺言書が、公正証書遺言なのか、自筆証書遺言であるのか。公正証書遺言である場合には、公証役場の所在地についても記載しましょう。
  • 作成した日
  • 保管している場所
  • 遺言を執行する人
  • 遺言を執行する人の連絡先

資産・財産の情報を開示する

ここから、具体的な情報を記述していくことになりますが、ここで注意すべきポイントがあります。

それは、エンディングノートの紛失や盗難を想定した上で記入するということです。

仮に盗難に遭ってしまった場合に、銀行口座の暗証番号、クレジットカード番号やセキュリティーのコードなどをすべて記入してしまうと、不正に利用されてしまいます。

たとえば、預金であれば、銀行名・支店名・口座番号の3つがわかってさえいれば、あとは銀行関係者などとのやり取りで何とかなるケースが多いのです。

預貯金

預貯金は、すべての口座を書き記しておくと安心です。

紛失・盗難の際のリスクを考え暗証番号などの記載はしないようにしましょう。

  • 金融機関の名前
  • 支店名
  • 口座の種類
  • 口座番号

保有している株や投資信託などの情報

ここで注意が必要なのは、近年のフィンテックなどの流行から、郵便通知などが一切ないネット上の証券口座などの場合に、家族の知る術が絶たれてしまうということです。

FXや投資信託などをネット上で行っている場合には、送信されてくるメールを受信しているパソコンのパスワード(後述)やアカウント名(ID)などは最低限記入しておくとよいでしょう。

  • 金融機関の名前
  • 取引口座の支店名
  • 口座番号
  • ネット口座に登録を行っている場合、登録を行ったメールアドレス

不動産

不動産については、家屋や土地以外に田畑や山など一度も訪れたことのない土地の権利を保有しているなどの可能性もあります。法務局で、登記を取るなどして、詳細を確認しましょう。(登記事項証明書など)

  • 物件の種類(土地・田畑・一戸建ての家・マンション・その他)
  • 物件の用途(投資目的なのか、別荘として使用していたなど)
  • 物件の名義(共有している不動産がある場合には、持ち分の割合を示しておくとよい。
  • 住所
  • 登記簿上の所在地(実際に郵送などで使用する住所以外の「地番」がわかるもの。詳しくは法務局で相談するとよいでしょう)
  • 登記簿上の所有者

高額な美術品やゴルフ会員権など、上記に当てはまらない資産

こちらも重要になります。とくに高額な美術品などは、なかなかその価値を知ることができないため、入手経緯(例:○○氏の借金の返済分として)を記しておくと良いかもしれません。

  • 品目(九谷焼の壺)
  • 購入日
  • 購入先(取り扱い先・例:横浜骨董屋)
  • 購入金額
  • 名義人(会員権や権利書のような場合)
  • 数量

人に貸しているお金

人に貸しているお金がある場合には、その返済状況などについても用意しておくべきでしょう。

  • 貸している相手の名前
  • 連絡先
  • 金額
  • 貸し付けを行った日付
  • 返済の期限
  • 返済のペース
  • 返済の方法
  • 金銭消費貸借契約書の有無

保険

生命保険の死亡保険金は相続税の対象ですが「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が認められているなどの特例が存在します。

不測の事態を考え、遺族が請求できるように明らかにしておくことをオススメします。

生命保険

生命保険に加入している場合には、必ず記述しましょう。

  • 保険会社の名前
  • 保険の種類あるいは商品名
  • 契約者の名前
  • 被保険者の名前
  • 保険金を受け取る人の名前
  • 保険に加入した日
  • 保険に加入している期間
  • 担当者の連絡先

電子製品などのアカウント情報

近年問題となっているのが、生前利用していた電子製品、とりわけ、スマホやPCの処理についてです。漏れのないように書いておくとよいでしょう。

パソコンや携帯電話のパスワード

携帯電話などの4桁あるいは6桁のPINコードと呼ばれる暗証番号もあれば、アカウントごとのパスワードを設定している場合もあるかと思います。

このパソコンなどのパスワードは、重要な書類やアカウントの情報を残された家族が、うまく処理できるようにするものですが、盗難時のリスクはよく承知の上で記入されたほうが良いかと思います。

SNSを利用している場合には、「パスワードを忘れたら」などという項目から、パスワード再設定を行うことで、家族がアカウントを管理できるようになる可能性があります。

アカウントを登録した際に利用した携帯電話番号やメールアドレスを記入しておき、パスワードを再設定する方法がわかるようにしておかれるとよいでしょう。

  • パソコンの起動時に必要な管理パスワード
  • 利用しているSNS(FacebookやTwitterなど)
  • 利用しているSNSへ登録する際に使用したメールアドレス
  • 利用しているSNSを遺族に削除させたいかどうか
  • 利用しているSNSで自分が死亡したことを報告したいかどうか

利用しているインターネットサービスやサブスクリプション契約

現代においては、スマホやPCなどでインターネットサービスを利用したり、サブスクリプション契約を行なっている方も多いのではないでしょうか。

このようなサービスを利用している方は、解約するときの参考とするために情報を残しておくと良いでしょう。

また、自分の契約サービスを見直す一助となるかもしれません。

  • 契約しているサービスの名称
  • 契約している名義人
  • 契約しているサービスで利用しているIDとパスワード
  • 料金の支払い方法(クレジットカードの場合にはどのカードを利用しているのか)

負債について

相続をする場合には、もちろん負債も含めて相続することとなります。

相続放棄を行うことができる期間は、借入れを行っていた人が亡くなってから3か月以内です。

借金を家族に背負わせる可能性がある場合には、明らかにしておきましょう。

ローン

住宅ローンや消費者金融を含むローンについては、すべて記入しておくと家族へ借金を背負わせてしまうという不測の事態を避けることができるでしょう。

  • ローンや負債の種類(住宅ローン・自動車ローン・カードローン・消費者金融や知人など)
  • 借り入れを行っている先
  • 借入先の連絡先
  • 借入金額
  • 借り入れを行った日
  • エンディングノートを記載した時点での借り入れの残高
  • 完済予定の日

葬儀・お墓

エンディングノートを書く際に、本人の意思として表明しておきたいという方の多い、お葬式の形態についてです。最近は家族葬なども珍しくありません。

どのような葬儀を望むのか、希望を伝えておくことから、終活は始まるのかもしれません。

葬儀の希望はどのようなものか

葬儀の希望を書いておくと、お見送りをされるご家族の方も安心です。

  • 葬儀の形式(一般的な葬儀・家族葬・火葬式・お別れ会・家族に一任するなど)
  • 宗教(最近は残された家族がご存じないという場合も多いため、記載しておくとよいと思います。とく宗派や菩提寺がわかっている場合には、連絡先とともに控えておきましょう)
  • 葬儀を希望する葬儀社
  • 生前に予約しているかどうか(ある場合には、連絡先)
  • 互助会に加入しているかどうか(ある場合には、連絡先)
  • 依頼したい業者が存在するかどうか(ある場合には、連絡先)
  • 想定している金額
  • 葬式の費用の用意があるのかどうか

埋葬の希望

家族への負担を考えて、お墓がある場合には、継いでもらう人を決めておきましょう。

継いでもらう方の候補がない場合には、新たに用意するのかどうかなどの記載も有効です。

  • 先祖代々の墓があればそこに埋葬してほしい、あるいは、生前に用意した墓がある
  • 墓があらかじめ用意されている場合には、所在地、管理会社、契約者名、連絡先を併記する。
  • 新たに購入を望む場合には、永代供養があるのかどうかや、散骨、納骨堂に収めてほしいなどの要望も記載するとよいでしょう。

連絡先

連絡先はもっとも大事なものの1つです。この連絡先の有無は、家族の負担を大きく減らすことができますから、ぜひ記載しておきましょう。また生前お世話になった方へのあいさつをする際にも非常に有効です。

親戚、友人、知人の連絡先一覧を表にしておく

親戚、友人、知人の連絡先は最低限要しておくとよいでしょう。

可能な場合には、該当する方のお子様や、パートナーの方の連絡先も控えておくと連絡の際に安心できます。

  • 名前(ご高齢の場合には、子供さんの名前を記載しておく)
  • 関係あるいは続柄
  • 住所
  • 電話番号
  • 生前のお付き合いで留意することがあれば、その内容を備考として併記

生活に関する情報

医療や介護についての意思

ご自身の判断能力が低下したり、重篤な状態となって意思決定できない場合に備え、情報を残しておくのもひとつの方法と言えるでしょう。

  • 持病と常備薬
  • 延命治療を希望するかどうか
  • 臓器提供を希望するかどうか(あるいは、ドナーカードなどの所在を明記)

ペットについて

一緒に生活しているペットがいる場合には残されたペットのためにも情報を残しておくのが良いでしょう。

  • ペットの名前
  • 年齢あるいは生年月日
  • 好きな食べ物やいつも食べているフードの名前
  • かかりつけの獣医さんの所在地

まとめ

いかがでしたでしょうか。

目白押しの内容になってしまいましたが、公正証書遺言や自筆証書遺言など形式が決まっているものを用意するよりも遥かに自由な書き方が可能です。

また、上記以外にも参考になる情報や、希望を「本人であるあなたの言葉」で書いておくことができます。

こうしたエンディングノートを書くことによって、家族への愛情を文章で伝えることができるだけでなく、自分の希望が反映された葬儀や相続を可能とするものですから、遺言を書く前段階として家族への自分の思いを伝えるために一度準備してみてはいかがでしょうか。