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相続税計算と特例の活用:実家・不動産相続で知っておくべきこと

宅地や建物の相続については、相続税の仕組みを知ることで負担を軽減できる可能性があります。実家に関する相続税の情報をまとめました。
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実家を相続する可能性のある人にとって、相続税は気になる人が多いポイントではないでしょうか。

複雑で難解なケースも少なくないので、ついつい調べるのを先送りにしている方も多いはず。

しかし、一見すると難しそうでも、落ち着いてゆっくりと読み返せば、内容を理解するのはさほど難しいことではありません。日本人に向けて日本語で書かれているため、専門用語などを除けば理解できないわけではないのです。

したがって、相続関連の相談を専門家に丸投げするだけではなく、自分たちでもしっかりと内容を把握しておくと、相続についての見通しが良くなり、よりイメージしやすくなることでしょう。

そこで今回は、相続税と実家の関連について、とくに不動産の相続税額の算出方法と80%減額できる特例を踏まえてご紹介します。

この記事をお読みになることで、基本的な知識を得るだけではなく、相続についてより身近に感じていただければ幸いです。

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家を相続する前に、おおよその相続税額を知っておこう

相続するときには、実際に販売価格だったり相続税の額面を簡単に理解しておくだけでも良いでしょう。

たとえば、人生で最も大きな買い物である家(宅地や建物)を相続した場合、その価値によって想定外の相続税が必要となる可能性があることに注意しなくてはなりません。

相続税は、家を含む遺産全体の金額に対してかかるものであるため、家だけの相続税額を計算するのは適切ではありません。

相続税について詳しくは国税庁HP「財産を相続したとき」にわかりやすく記載されています。

しかしながら、家は相続財産としては決して無視できない金額となるため、家だけでどれだけの相続税額となるのか把握しておくことはとても大切でしょう。

相続税の基礎:遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人)を超えると相続税が必要になる。

相続税は、家を含む遺産全体の金額に対してかかるもので、基礎控除額を超える価値の遺産を受け取るときに必要になります。

とくに、遺産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人)を超えると相続税が必要になる、というのが一般的な理解でしょうか。

基礎控除額とは、相続税がかからない遺産の金額のことを指し、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で求められます。

つまり、すべての人が相続税を支払う対象になるわけではありません。

たとえば、法定相続人(財産を相続できる人)が1人の場合には3,600万円、2人の場合には4,200万円です。何人の相続人がいるのかによって、控除額は大きく変わる可能性があります。

法定相続人になれるのは、配偶者や血縁関係者、養子です。

遺言がない場合は、配偶者とその子供が相続人になることが一般的です。

複雑な相続人の関係となるケースもあることから、このような時は信頼できる税理士さんや弁護士さんに相談しておくと良いでしょう。

宅地や建物の評価額を計算してみる

家だけでどれだけの相続税額となるのか把握しておくことはとても大切です。

宅地は路線価などをもとに計算し、建物は、固定資産税評価額によって計算します(同額の場合が多い)。

路線価と、毎年5月に送られてくる固定資産税の納税通知書の面積(あるいは価格)がわかれば、宅地の評価額を計算できます。

土地の価格を確認するための路線価は国税庁のページで確認できますので、確認しておきましょう。

マンションの場合、土地の評価額は「マンションの敷地全体の評価額×持分割合(敷地権割合)」で計算し、建物は固定資産税評価額によって計算します。

例1 土地付一戸建て

土地付一戸建て相続を考えてみます。

固定資産税の納税通知書の面積に300㎡と書いてあったとします。

国税庁のHPで路線価を調べたところ、1㎡あたり10万円の路線価の道路に面している土地であることがわかりました。

この場合、300㎡×10万円=3,000万円が土地の評価額です。

家屋は固定資産税評価額にある金額です。

路線価ではなく倍率方式となっている場合(市街化調整区域や農用地区域に立っているケース)は固定資産税評価額(固定資産税の納税通知書の「価格」)に対して倍率をかけることで算出できます。

例2 市街化調整区域の一戸建て

市街化調整区域に立っている土地付一戸建ての土地を考えてみましょう。

固定資産税の納税通知書の価格に1,000万円と書いてあったとします。

国税庁のHPで倍率(固定資産税評価額に乗ずる倍率等)を調べたところ「1.4」と書かれている土地とわかりました。

このとき、1,000万円×1.4=1,400万円が土地の評価額です。

家屋は固定資産税評価額にある金額です。

借地権が設定されている場合には、借地権も相続税の対象となるため、路線価や倍率によって求められた評価額に借地権割合を掛け算して求めます。

例3:実家がマンション

自宅マンションの場合について考えてみます。

国税庁のHPで路線価を調べたところ、1平米あたり50万円の路線価の道路に面している土地であるとわかりました。

マンション全体の面積は5,000㎡で、売買契約書あるいは登記簿には、敷地権の割合として「5,000,000分の5,000」と書いてあります。

この時、マンション全体の土地評価額は5,000㎡×50万円=25億円で、持分割合が5,000,000分の5,000

ですから、全体の評価額を1住居分にすると、25億円×5000÷5,000,000=250万円とわかります。

建物は固定資産税評価額にある金額で、仮に2,000万円だとした場合、相続税評価額は2,250万円と求められます。

特例によって評価額を80%割引して相続税を大幅に安くできる(小規模宅地特例)

小規模宅地特例とは、亡くなった人の自宅(宅地と建物)を、配偶者か同居している親族が相続したときに、評価額から8割引の金額にする制度です。この特例を利用することで、相続税の負担を大幅に軽減できます。

亡くなった人が自宅として使っていた土地である場合、最大で50~80%減額できます。

一戸建て住宅だけではなくマンションにも利用できます。(購入したマンションの敷地権に適用可能)

相続した人がこれから住み続ける土地に対して相続税を課税するのは負担が大きく、高額な税負担により自宅を手放さなければならないようなケースを防ぐための措置と言われています。

参考:国税庁HP「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

例えば、3人家族で旦那様が亡くなられた場合を考えてみます。この時、特例を受けられるのは妻と同居している子供です。


  • 被相続人の配偶者。無条件で特例を利用できます。
  • 同居実態のある子供
    住民票だけ移すなどではなく、同居していた実態が必要で、相続開始の直前から相続税の申告期限(10か月)までずっと建物に居住している必要があります。

また、別居して3年以上賃貸で暮らしている親族も特例を受けられます。

たとえば、親が一人で実家に住んでいて、その子供が別居していて持ち家を持っていない場合にも特例を利用できるのです。これを「家なき子の特例」と言うようです。

詳しくは相続会議「小規模宅地等の特例が使える「家なき子」とは?条件や考え方、必要書類を解説」に解説されています。

なお、別居している子供が住んでいる借家は他人から借りている物件の必要があり、すでに持ち家を持っている子供が、自分の持ち家を親名義して特例を利用するなどといった方法は2018年4月1日から禁止されているようです。

参考:日本経済新聞「相続「家なき子」適用厳しく

経過措置が設けられているようですので、詳しくは信頼できる税理士さんに相談すると良いでしょう。

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まとめ

今回は、実家を相続する場合の相続税について見てきました。

相続税についての基本的な知識と、特例を活用する方法を理解することで、未来のリスクを減らすことができます。とくに、不動産を相続する際には、事前にしっかりと計算と準備をしておくことが重要です。

不動産に関するお問い合わせは年々増加傾向にあります。

1947年から1949年の第1次ベビーブームに生まれた、いわゆる団塊の世代(約677万人)が75歳以上となる2025年以降に経験する超高齢社会への突入においては、より深刻な空き家問題に接することになるかもしれません。

このような情勢では、相続した実家が空き家状態になっていたり、空き家状態の実家を相続する予定だったりといった事例が散見されることになり、管理の不備から思わぬリスクを経験する人が増加します。

実際に、お部屋のお片付けを主としている私たちのもとへのご依頼は、お片付けそのものではなく、不動産に関連すること、また相続のご相談等非常に幅広いため、提携する士業の皆さんと連携して対応を行っています。

相続についての知識獲得の一助にこの記事が役立てば幸いです。

最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。

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